練乳イチゴ

 

……暑い。

蝉が五月蠅い位に鳴いているから、

28℃なんて軽く超えてるんだろう。

こんなに暑いのに、

俺の隣にいるコイツは汗一つ掻かずに、

しゃんと背筋を伸ばして歩いている。

「進藤、アイス食べないか?」

塔矢が唐突にそう言って、

近くに駄菓子屋さんも見えることだし、

「そうするか」

って、俺は答えた。

……暑い。

蝉の声が大きすぎて、逆に静に感じる。

そんな句を詠んだ俳人も居たっけ、

とぼんやり考えてみる。

隣を歩く進藤は、暑さ負けして気だるそうだ。

「進藤、アイス食べないか?」

そう声をかけてみると、

進藤は少し考えてから

「そうするか」

って、僕に答えた。

塔矢は何が美味しいのかと聞いてきた。

俺は練乳イチゴを選んでて、

氷イチゴの甘酸っぱいシャクシャク感と、

練乳の濃い甘さが最高なんだと教えてやった。

でも、

「じゃあ……」

と言って塔矢が選んだのは練乳小倉。

別に御揃いの物食べたい訳じゃないけれど、

違う物選ぶんだったら、態々俺に聞かなくてもいいじゃん?

ちょっと悔しいから、

「抹茶入ってるじゃん。

 苦くなるぞ」

って言ってやったら、

早朝の露を載せた朝顔みたいに

アイツは微笑んで

「一口ずつ交換できるな、って思ったから」

って言ったから、俺もつられて

「そっか」

って笑った。

「でも俺は一番上のとこの、

練乳と餡子のとこしか食べないかんな」

アイスを食べようと誘ったものの、

僕はあんまり食べた事が無いので、

何が美味しいのか、よく解らない。

母がハーゲンダッツしか買ってこないから、

家ではそれしか食べた事が無いし。

進藤に聞いてみたら、練乳イチゴが美味しいらしい。

でも、甘酸っぱいのと、更に甘いのって、

かなり甘くなってるんじゃないのか?

と思って、小倉の方を選んでみた。

「抹茶入ってるじゃん。

苦くなるぞ」

って進藤が言ってきたから、内心苦笑しながら、僕も微笑んで

「一口ずつ交換できるな、って思ったから」

って答えたら、進藤は

「そっか」

って、大輪の向日葵みたいに、満面の笑みを浮かべた。

その笑顔があんまり素直で、眩しかったから、

つい進藤の宣言に

「あぁ、いいよ」

って言ってしまった。

 

駄菓子屋さんの近くには、向日葵畑が広がっていた。

毎年毎年、種を植える訳でも無いのに、この季節に大輪の華を咲かせるのだと言う。

 

向日葵は太陽に憧れて

東から西へ首を振るって言うけれど

進藤、先刻の笑顔は

僕に向けられていたって、そう思ってもいい?

僕は君の太陽になれる?

 

駄菓子屋さんの入り口の近くの、古い井戸のつるべに、

朝顔が巻きついて、薄青い花を開かせている。

 

朝顔に つるべ取られて 貰い水

佐為に教えて貰った詩。

先刻の塔矢みたいに微笑まれたんじゃ、

流石に詩の作者だって、朝顔を優先するだろう。

俺も朝顔につるべを取られたみたいだ。

 

「あ、当りだ」

駄菓子屋さんの前に置かれていた、簡単なベンチに腰掛けて、

アイスを一口ずつ交換した後、塔矢は溶ける前にアイスを完食。

「え?あ、ホントだ」

ヒカルは溶けかけたアイスが手についたのを舐め取りながら、

塔矢のアイスの棒を見て答えた。

「あっ」

ヒカルがちょっと目を離した途端、

残りのアイス3分の1位が、蟻の御飯と化してしまった。

「あ〜……残念。

俺いっつも最後まで食べらんないんだよ。

溶けるの早すぎ!!」

「折角当りが出たし、進藤食べる?」

「え、いいの!?」

 

あ、進藤先刻のアイスの練乳がついてる。

何か塔矢、顔近くない?

 

ちゅ

 

「じゃあ、もう一本貰ってくるね。

先刻のと同じでいい?」

「……うん」

 

何だ?

今塔矢、俺に何した?

ちゅ、って?

えええぇぇ!?

……やっちゃった。

あんまり可愛かったからつい……。

進藤、怒るかな?

 

「はい、お待たせ。練乳イチゴだ…よっ!!?」

そう言って、塔矢は金色に光る大輪の華と一緒に、……こけた。

正面でアイスを受け取ろうとしたヒカルに、向日葵がバラバラと降ってくる。

塔矢がこけた?

あの塔矢アキラが?

少しの腹立たしい気持ちも何処へやら。

内心、珍しいものが見れたと苦笑しながら、

「大丈夫か?」

そう言って、塔矢に手を差し伸べると、

くんっと腕を引っ張られて、進藤もこけた。

「今笑っただろ」

悪戯っ子の様に塔矢が進藤を見上げる。

自然と笑いが込み上げて来る。

 

ちゅ

 

「練乳ついてる」

そう言って、進藤が僕の口端にキスしてきた。

少し驚いたけれど、

「ありがとう」

そう言って、僕も進藤にお礼のキスを返す。

君の髪と同じ色の華の中で、僕は何を感じてる?

進藤、君に近づきたい。

「練乳ついてる」

そう言って塔矢にキスしたら、

アイツ、ちょっと驚いた顔してた。

先刻の仕返しのつもりだったのに、

「ありがとう」

そう言って、塔矢はまた俺にキスしてきた。

俺のが一回少ないけど、まぁいっか。

お返しは次の機会に取っておこう。

 

「アイスは落としてないから大丈夫だよ。

今度こそ最後まで食べきれるといいね」

「それよりお前その向日葵どうしたの?」

「あぁ、駄菓子屋のおばさんが切ってくれたんだ。

素晴らしい向日葵ですね、って言ったら、

持って帰るかって聞かれたから……」

「へー、そうなん……あっ!!」

 

相変わらず蝉は元気に鳴いている。

今日はこの辺の蟻もお腹一杯になれることだろう

蟻になりたい。
が、私の第一感想です。
第二感想は駄菓子屋のおばさん。
第三感想はひまわり。
・・・全部ウチの欲望と希望やがな。てか
塔矢こけるんですか!!
良いっ!それめっちゃいいよ!と内心ガッツポーズ。
そして初々しい。
あま〜い!!!(某お笑い芸人調に)
甘いよ〜溶けかけた練乳イチゴアイスを舐めとるキミの真剣な横顔ぐらいあまいよ〜。
(・・・言い回しあってますか?)
注:私じゃありません。塔矢くんが言いました。
もち米さんには毎回嬉しい悲鳴を上げさせて貰ってばっかりです。
何度言ったかありがとうの言葉。
でもありがとう!!それしか言えないっ。もうもう、早くサイト作っちゃって!!
来年の夏も、私はひまわりを見たら蟻になりたいと思うでしょう。

ひまわりと朝顔か。確かに彼等らしい〜
塔矢は紫か青系統かな。夕顔でも良さそう♪



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