手錠をかけられて、キスされた瞬間、アキラは相手の目の色がいつもと違うことに気がついた。

「なっ・・やめるんだ。進藤っ!いったい何の・・・っ」

慌てて月並みな抵抗の言葉を発しようとしたのに、

封じるようにキスをされて、頭の中が酸欠状態となり朦朧とする。

強引に続けられる相手からのキスに上がる呼吸とかすかに漏れる自分の声。

アキラは違う世界へ引き込まれつつあった。

思わずつむってしまった目は開けることのできないまま、抵抗するために相手の肩を掴んだ手もそのままだった。

 

ふと我に返ったのは、ヒカルの手がアキラ自身に触れてきた時。

驚きのあまりつむっていた目を見開く。

「やめろっ!!!」

見開いた眼に映ったのは、自分を貪るヒカルの姿。

一心不乱に自分の口を蹂躙する様子はまるで、何かに憑かれたかのように、感じられた。

アキラの腕の自由を奪うための手錠がこすれていたものの、そんな痛さを気にする余裕もなかった。

無理やり体温を上げられた身体が心臓のように脈打ち、かすかに震える自分の体が自分のものでないような気すらする。

目の前の相手から逃げろという自分の本能の警告を必死に遂行するためにアキラは体に残る全ての力をかけて、ヒカル唇を食い破った。

「・・・。なんだ まだそんな余裕が残ってたんだ」

 感情も抑揚もない声を発するヒカルの瞳は妖しい光を放った。

「自分の立場が分かってないんじゃねぇの?」

そう言って、アキラの胸にむさぼりつく。

「っ離せ! 進藤… やめ…」

自分の体の中に残る理性で発する声はすべて言い切る前に虚しくかすれた。

「ああっ…」

思わずもれた自分自身の喘ぎ声にアキラは理性を打ち砕かれそうになった。

ヒカルの執拗なまでの愛撫に反応してしまう自分自身を信じたくないというわずかな抵抗も込めてぎゅっとその目をつぶった。

「あーあ見ろよこんなに出して。

澄ました顔して本当は淫乱なんだ?

やらしいなぁ。塔矢センセイは」

アキラの自身が反応していることを知らしめるかのように、ゆっくりと触って、ヒカルはアキラが必死につなぎ止めている理性すら容赦なく打ち砕こうとした。

「何故・・・だ。どうしてこんな事をする。

いったい何が君の機嫌を損ねたのか解らない。ボクがキミに何かしたとでもいうのか」

ずっと考えていたのだ。

感じのいい好青年だとアキラが好感を抱いていたヒカルが豹変した理由を。

「ああ、したさ。最低のことをな」

ヒカルの言葉にアキラは目を見開いた。

「・・・っ!!」

しかし次の瞬間、力任せに壁に押し付けられた衝撃に見開いた目を反射的につむった。

 

自分の質問がかえって相手を逆上させてしまったようだった。

アキラ自身をヒカルが手と口で、容赦なく執拗なまでに攻め上げる。

「あっ。んんっ。いっ。や・・あ っあ・・・」

自分の意思と関係なく身体だけが昇り詰めさせられる。

「あああっ」

自分を支える腿が震える。

無理やり達された羞恥と、自分の体内から出したものが足を伝わって落ちる感覚への嫌悪感に支配される。

それでも、自分の中に残るわずかなプライドから、上がりきった息を必死に整えようとした。

「なんだ、もうイッちまったの?

もう少し、我慢しろよ。本番はこれからなんだからさ」

そんなアキラの様子をあざ笑うかのように耳元でヒカルは囁いた。

ヒカルが追い詰め達されたアキラ自身の名残を残したその手をアキラの口元にあてがいながら・・・。

無表情だった顔には非常なまでの冷たい笑みが浮かんでいた。

「何を」

「何をだって?本気で聞いてんの?」

了解を得ることもなく、アキラの中にヒカルが入り込んで来た。

グチャというリアルな音を聞いた瞬間に襲ってきた衝撃にアキラの顔がのけぞった。

「ああっ・・・―っう」

ヒカルが少しずつ身体を進めるにつれて、アキラの口から悲鳴がこぼれた。

「や・・・やぁ。もう・・・やめ・・・」

「そう言う割には、よく締め付けてくれるじゃん。

本当は良すぎてたまんないんじゃねえの?」

アキラの悲鳴すら喜ばしいもののように、ヒカルは口角をあげた。

「そういやお前、女みたいな顔してるもんなぁ。

実は身体まで女々しいとか?ははっ」

「・・・・・・・なんだな」

つぶやくように発されたアキラの言葉はヒカルの耳に届く前に空気に溶けた。

「なに?」

「キミもアイツ等と同じなんだな。外見だけで決めつけて、僕の気持も碁も何一つ見ていない・・・」

顔を逸らして、全てを諦めたような表情をするアキラに、ヒカルの体温が一気に下がった。

凶器にも似た青い炎がヒカルの瞳に灯った瞬間だった。

「お前に言われたくねぇよ」

何の前触れもなく力任せに、一気にアキラは貫かれた。

軋んだ身体が悲鳴を上げる。

「自分の碁をみていないだって?

お前の方こそそうだったじゃねえか!

最後までお前はオレの中のアイツばかり見続けて・・・」

下がりきった熱を一気に上げて、感情を爆発させながら

吐き出された言葉は、アキラが封印していた記憶。

心の一番大事な場所にありながら、決して触れないようにしてきた出来事だった。

力任せに突き上げられて、身体がバラバラになりそうな衝撃にこらえながらも、

その時のオレの気持ちが分かるかと叫ぶヒカルと対称的にアキラは頭は冷静さを取り戻していた。

「・・・しん・・ど   手錠を・・・解いてくれ」

命令でも懇願でもないアキラの言葉にヒカルの動作が止まった。

「逃げない・・・から。確かめたいんだ。

本当に・・・キミなのか。キミが・・・」

今までと明らかに異なるアキラの様子に、

ためらいながらもヒカルが手錠を外した瞬間、アキラは目の前の存在を抱きしめていた。

ヒカルの肩に顔をうずめたまま、アキラの時が止まった。

動かなくなったアキラにヒカルは不安げな声をかける。

「塔矢・・・?」

「・・・進藤。 進藤ヒカル・・・・・・・・」

発する言葉とヒカルを抱きしめる腕にはアキラの心が込められていた。

「あっ」

お互いの間に立ちはだかる壁と、

心と身体の絶対的な温度差が一気に無くなった瞬間。

ヒカルをヒカルだと認めたアキラはすがりつくように目の前の相手に抱きついていた。

身体と気持と言葉と、2人の全てが混じり合う中、

やっと欲しいものを手に入れたかのように

お互いに抱きしめる腕に力を込めて、

互いの名前を呼び合って、一緒に上り詰めた。

 

 

 

 

秀策の本を手にとって

「家族・・・みたいなものかな」

と言うヒカルのまなざしにアキラは少し嫉妬した。

けれど、その受けたキスは自分だけのためのもの。

だからこそ、アキラも自分の気持ちをそのキスに込めたのだった。



























サボテン」のユキコマリ様から頂きました!
じ、実は先日の「イゴカミ!」で、此方のサイトで載せているRものを全て
小説化してくださり、更に製本したものを頂いたのですが、
今回は我が侭を言いまして、キリリクで描かせていただいたマジシャンヒカアキの
R部分の小説版を掲載させていただきましたv
もうもう、細かな心理描写など、私のいい加減な漫画ですと
どうしても空気で誤魔化してしまう部分が、ユキコマリ様の文章ですと
深く繊細に表現されていまして、こんなお話が描きたかったんだ・・・・!(感)と
すでに一読者の立場で身もだえておりましたv
理性を総動員して必死で耐えようとするアキラと、努めて冷淡なヒカルの様子が
印象的で、色っぽさも文章ですと色々な想像が広がりまして一層ドキドキします〜♪
本当に、文字書き様のセンスには頭をさげるしかありません。
ユキコマリ様は原作寄りのお話作りの秀逸さは言わずもがな、
パラレルでの世界観を創られるのも大変お上手で、
お話を拝読する度に独特の世界観に引き込まれてしまいます♪
ユキコマリ様の文章で、マジシャンの二人を拝見できまして本当に幸せですっ。
この度は素敵なお話をありがとうございました!



 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送